2026/10/27
- 対談
「とりあえずBIM」から脱却。利用目的から考えるBIM活用

建物の維持管理にBIMを活用するためには、どのようなモデルや情報が必要なのでしょうか。
BIMを導入しても、実際の維持管理業務で活用できなければ、その価値を十分に発揮することはできません。大切なのは、BIMを作ること自体ではなく、建物オーナーが何に困り、何を改善したいのかを考えることです。
設計・施工から将来の維持管理までを見据えたBIM活用を推進する株式会社Joh Abroad (ジョーアブロード)と、「BIMSTOK」を提供する株式会社アーリーリフレクションによる特別対談。
前回に続き第2回は、改善したい業務を明確にすること、オーナーへのヒアリング、そしてモデルに持たせる情報について意見を交わしました。
対談参加者

1. BIMで、どの仕事を改善したいのか
アーリーリフレクション 三井 瑞紀 氏(以下、三井): BIMSTOKを最初にリリースした2023年頃は、「BIMとは何か」というところからお客さまに説明していた印象があります。それが、2024年12月に東京ビッグサイトで開催された建設DX展に出展した際には、お客さまのほうから「エネルギー管理をBIMでやりたい」などの具体的な話が出るようになっていました。この数年で、状況が変わってきたのかなと感じています。御社では、どう感じていらっしゃいますか。
Joh Abroad 福澤 譲 氏(以下、福澤様): スーパーゼネコンでも、BIMを前提に仕事を進めるようになったのは、この5年ぐらいではないでしょうか。「BIM元年」と言われ始めたのは10年ほど前だったと思いますが、そのころは意匠での活用が中心でした。
一口にBIMといっても、意匠BIM、施工BIM、ファシリティマネジメントのためのBIMなど、使い方はさまざまです。だからこそ、どのプロセスを改善するために使うのかを明確にしておく必要があります。
最近、BIMの支援をしていると、「とりあえずBIMを始めてみます」という会社もあります。しかし、何を改善したいのかを考えずに始めても、うまくいかないことが多いんです。
目的は、お客さまとの合意形成なのか、施工のマネジメントなのか。
そこが曖昧なままだと、「BIMソフトできれいなパースを作る」だけになってしまいます。
2. BIMありきではなく、維持管理から逆算する「FM BIM」
三井: 現在、御社が手がけているBIMモデルは、どのような目的で使われるものが多いのでしょうか。
福澤様: 設計側では、オーナーとの合意形成や確認申請をゴールにしていることが多いです。施工側であれば、積算や工程管理、干渉の確認などに使い、引き渡しがゴールとされていますね。
一方、建物を引き渡した後のファシリティマネジメントやエネルギーマネジメントまで考えると、オーナーさんのために使えるところはもっとあるはずです。
ファシリティマネジメント(FM)から逆算すると、結局「BIMはいいものだ」というところにたどり着くと思います。私たちは「BIM FM」ではなく「FM BIM」という考え方で、BIMの普及に取り組んでいます。
三井: BIMをどう維持管理に使うか、ということではなく、まず維持管理で何を実現したいのかを考え、そのためにBIMを活用するということですね。
3. 維持管理に必要な情報は、オーナーの声から考える
三井: モデルに入れる属性情報について伺いたいです。実際に、オーナーが維持管理でどのような情報を必要としているのか、御社はどのように把握されているのでしょうか。
福澤様: 建物の管理の仕方によって変わると思います。どのような情報を入れるのかは、モデルを作る私たちだけで決めるより、まずオーナーさんにヒアリングするべきです。
ただし、オーナーさんはそもそもBIMで何ができるのかを知らないことがあります。例えば「情報を何でも全部入れてください」と言われても、それによってデータが重くなることまではご存じないというケースも多いんです。
だからこそ、まずはオーナーさんに「BIMとは何か」「BIMで何ができるのか」を知っていただくことが必要です。そういった取り組みを、御社と私たちで一緒に行っていくことで、BIM活用をとりまく状況も変わってくるのではないかと考えています。
4. モデルの精巧さよりも、維持管理に必要な「情報」が重要
三井: 維持管理に使うBIMモデルでは、どのような点が重要になるのでしょうか。
福澤様: BIMは「Building Information Modeling」の略ですよね。私はこのなかで「I」、つまり「Information」がもっとも重要だと考えています。維持管理BIMにおいては、重要な意味をもつのは「Modeling」ではないと思うんです。
どういうことかというと、維持管理のためにBIMモデルを使う場合は、見た目のきれいさよりも「必要な情報が揃っていること」のほうが大切だということです。
オーナーさんとの契約や合意形成のためにモデルを見せる場合と、維持管理に使う場合では、重視するものが変わります。
三井: 維持管理では、モデルの見た目以上に、必要な情報が揃っていることが重要ですよね。実際に、そうした情報の管理や引き継ぎには、どのような課題があるのでしょうか。
福澤様: 設備がどこのメーカーのものなのか、どの会社が点検しているのか、そのような基本的な情報が紙で管理されていることも多く、会社を移転した際に資料がなくなってしまうこともあるんです。管理会社が変わるときに、情報を引き継げないことも問題です。
こうした維持管理の情報をBIMSTOKに入れておけると安心ですし、なにより便利ですよね。BIMモデルそのものに多くの情報を持たせると、データが重くなって開きにくくなることがあります。そのため、BIMに紐づけて情報を保管できるという点も、BIMSTOKの魅力だと感じています。
アーリーリフレクション 田中 喜之 氏(以下、田中): ありがとうございます。ただ、情報を入れるといっても、オーナーさんの中には、メンテナンスにどのような情報が必要かを具体的にイメージできている方と、そこまで詳しくない方がいらっしゃいますよね。
福澤様: すべての情報を最初から入れる必要はないと思っています。必要な情報は、後から追加することもできますから。
田中: そうですね。「この情報もモデルに結びつけたら便利だ」となったときに追加していけるのも、BIMSTOKを活用いただきたいポイントです。
大切なのは、BIMモデルを完成させることではなく、オーナーが長く使い続けられる情報基盤をつくることだと考えています。
対談最終回は、工場の維持管理費に着目。エネルギー管理、設備交換、故障前の点検という3つの観点から、BIMによるコスト削減の可能性を探ります。

対談後、Joh Abroad様のベトナムオフィスを訪問させていただきました!

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