株式会社アイ・ディー・エー 様

【ダム管理45年のベテランが語る】BIMSTOKが維持管理の課題をいかに解決するか

株式会社アイ・ディー・エーは、より効率的な施設維持管理の実現を目指し、同社顧客へのBIMSTOKの導入を推進しています。同社 東日本事業部 顧問 千葉事務所 所長の後藤 恭央氏に、ダム管理の変遷とBIMSTOKに期待することについてお話を伺いました。

<p>(写真右:株式会社アイ・ディー・エー  後藤 恭央氏、写真左:弊社 水野 勇望)</p>

(写真右:株式会社アイ・ディー・エー 後藤 恭央氏、写真左:弊社 水野 勇望)

課題

ダム管理にかかわる職員数が減少する中で技術継承が困難

総合管理を実現するためシステムの共通化が必要

解決策

BIMSTOKを利用し施設全体の設備を一元管理

効果

総合管理を行う各ダムを共通の項目で管理することで、状況の把握が容易に

維持管理業務の属人化を防止

土木、電気、機械設備などを含めた全分野のデータを一覧で確認可能

ダム管理現場の45年間 -変化する気象。今あるダムを最大限活かすことの重要性-

まずはじめに、後藤さんの経歴を教えていただけますか。

後藤さん:豊田工業高等専門学校を卒業後、「地図に残る仕事がしたい」という思いから、ダムや水路の建設・管理を行う水資源開発公団(現:水資源機構)に就職しました。霞ヶ浦開発事業を皮切りに、これまで、利根川河口堰の管理、徳山ダムの事業費改定や浦山ダムをはじめとするダムや貯水池の建設・管理に40年ほど、また、アイ・ディー・エーでは、ダム・水路建設及び管理事業に技術者支援として人材を派遣する業務に5年ほど携わっています。

この45年間で、ダムの建設や管理にどのような変化がありましたか?

後藤さん:この45年の間に全国で多くのダムが建設され、設計及び施工技術は各段に進歩しており、ダム建設のマニュアル等も整備されています。

世界的に見ても、日本のダムの建設技術や維持管理技術は大変優れていると思います。操作規則等もしっかり定められていて、それに基づいてダム操作が行われています。

ただ、最近は地球温暖化の影響等により、雨の降り方も変わってきていて、従来の操作規則では対応しきれず、新たなダム操作が求められています。そのため、より高度なダム管理が求められるようになってきました。 

 

気象状況の変化によって、ダム管理に求められることも変わってきているのですね。後藤さんが思う、ダム管理の課題はどのようなところですか。

後藤さん:昭和・平成にかけて多くのダムが完成し、治水・利水・発電等機能を発揮していますが、最近は完成後30年を超えるダムが増えてきています。

古いダムが増えていく中で、ダムの維持管理をどのように行っていくのか、ダムの再生も含めて考えていく必要があり、ダムの運用面では、どのようにして既存ダムの能力を最大限活かした運用を行っていくかが重要になってきています。 

ダムそのものの長寿命化とそのための運用が、まさに転換期になっているということですね。

後藤さん:はい。今まではダム毎に定められた規則によって比較的に保守的なダム管理を行ってきましたが、今後は、治水・利水とも最大限ダムの機能を活かした操作が必要になってきています。ここ最近においては、過去に例を見ない降雨や渇水の被害が発生しています。このような状況を踏まえると柔軟なダム運用を行うことで、ダム機能を最大限活用する必要があると感じています。

さらには、個々のダムでの運用ではなく、流域全体を考えたダム運用も必要になってきています。

国交省で積極的に推進している「流域治水」を定着させていくことが求められると思います。「流域治水」はその流域に関係する官民が一体となって取り組んでいくものです。この中でもダムは重要な役割を担っており、必要に応じて放流設備の強化やダムのかさ上げなどを行うことで既存のダムのポテンシャルをいかに上げていくかが重要と考えています。 

ダム管理現場が直面する課題 -技術継承と省人化の実現へ-

お話を伺って、維持管理や運用面が一段と重要になってきていることが分かりましたが、現状はどうでしょうか。

後藤さん:維持管理に関しては、3年ごとに定期検査を行っており、完成後30年を経過したダムにおいては、更に詳細に総合点検を行っています。

点検を重ねるごとにデータは蓄積されますが、各ダムでデータの保存の仕方が違うため、転勤等で担当者が替わるたびにデータを把握するのにかなりの時間を要しているのが実状です。

ダムの建設管理に携わる職員数も少なくなってきています。私が在籍した組織では、最盛期2,000名以上いた職員が、建設が減ってきたとはいえ現在は1,200名程度に減少してきています。 

そんなに減ってきているんですか。その中で、どのような課題があるのでしょうか。

後藤さん:まず、建設に携わった方の多くが、近年退職されています。

技術継承には努めていますが、建設現場も減少し、なかなか思うように進んでいない状況があります。建設時の情報等については、維持管理にも大きく関わってきますので、深刻な課題の一つであると感じています。

また、職員数が減ってきている中で、日々のダム管理は待ってくれません。そこで求められるのが、「省人化」「省力化」によって、少ない職員数でいかに今まで以上の管理を行っていくかが課題となります。

現在、ダム管理の現場では、複数のダムを総合的に管理する構想が進んでいます。これは総合管理所を設置して、ダムを集約的に管理していくものです。そのため、ダム管理においては必要最小限の職員しか配置できないため、単純な作業等については、民間の力も必要になってくるでしょう。 

データの管理も組織として共通の管理方法が求められてくると考えています。職員が入れ替わっても迅速に対応できる体制づくりをしていくことが重要となります。 

 

新しいダム管理の実現へ -BIMSTOKができること-

民間の会社もずっと同じとは限らないですから、仮に会社が変わっても引き継ぎができる体制づくりというのは今後重要になってきますよね。

総合管理を実現する上で、その他にはどのようなことが求められるでしょうか。

後藤さん:すでに下水放流は遠隔操作を行っているところはありますが、今まで以上に遠隔操作が必要になると考えています。信頼できるデータを活用し、総合管理で複数ダムの情報が瞬時に把握できるようにすることが求められています。

また、リアルタイムで現場を把握するシステムの導入も必要だと考えています。操作が遅れてしまうと特に災害などに大きく影響しますから。 

そうした理想的なダム管理を実現するうえで、BIMSTOKに期待することを教えてください。

後藤さん:まずは維持管理データを一元管理できるということです。土木、電気、機械設備などを含めた全分野のデータを一覧で把握できるのは大きな強みです。

さらに、検査資料の紐付けができ、瞬時に細かいデータを見られる点もデータベースとして有用です。また、各ダム共通の項目で管理するため、誰でも瞬時にデータの把握ができ、属人化を防ぐことができます。日々のデータもBIMSTOKで管理できるため、職員数が減っていく中で非常に有効です。

今後さらに期待するのは、AIを活用したアラート機能です。過去の漏水量や堆積に関するデータをもとに、AIが異常を検知して知らせてくれる機能があると、よりいっそう職員の負担が減ると考えています。 

管理者数が少なくなる中で、保管データを活用して職員の判断や考察をサポートできると理想的ということですね。

後藤さん:はい。より高度な管理が求められている中で、異常検知のヒントを与えてくれるだけでも、職員はそこに特化して確認ができるという点で効率化につながると考えています。

操作の判断材料になる点に加えて、異常を瞬時に見つけられる体制をつくるという点でも、BIMSTOKは役に立つものです。 

まさに我々が考えているBIMSTOKの将来像で、今後の機能アップデートでより施設の安全性を保っていけるものにしたいと考えています。

後藤さん:日本全国、海外の新興国に共通するダム管理の課題をBIMSTOKで解決していけると思っています。日本から新しいダムの管理のあり方を発信できると良いですね。

ダムに携わる人が少なくなる中で、このようなシステムがあれば、熟練技術者がいなくなっても若い方にノウハウが引き継がれるでしょう。

データベースは他にもたくさんある中で、BIMSTOKによってそのデータを活用し、携わる方の負担軽減につなげることができれば、より魅力的だと感じます。 

株式会社アイ・ディー・エー 様

株式会社アイ・ディー・エー 様

組織概要

1990年創業の総合建設コンサルタント。
各分野における最新のテクノロジーと、そのテクノロジーを複合することによって生まれる一層のシナジーをもって、社会に貢献する。

公共工事の支援や、高速道路の維持管理を行う。群馬県高崎市に本社を置きながら、現在、東京、大阪、名古屋など、大都市圏での実績も拡大。

従業員 512名(2024年6月1日時点)